大航海時代を震撼させた「壊血病」とビタミンCの秘密

「壊血病(かいけつびょう)」
大航海時代、長い航海を続ける船乗りたちを苦しめ、多くの命を奪った病気として知られています。
その原因は、実は私たちにも身近な栄養素「ビタミンC」の不足でした。

今回は、壊血病の歴史と、その正体に迫ります。

海賊よりも恐れられた「海の災厄」

15〜18世紀の大航海時代。コロンブスやマゼランをはじめ、多くの探検家たちが未知の海へと航海に出ました。

しかし、彼らにとって本当の敵は暴風雨や海賊ではありませんでした。

長い航海の末に船内で静かに広がる「壊血病」こそが、最も恐れられた存在だったのです。

当時の船乗りたちには、次のような症状が現れました。

  • 理由のない強い疲労感や全身のだるさ
  • 筋肉や関節の痛み
  • 歯ぐきが腫れて出血し、歯が抜け落ちる
  • 皮膚にあざ(皮下出血)が次々と現れる
  • 治ったはずの古傷が再び開くこともある

原因が分からなかった当時、人々は「船内の悪い空気」や「潮風の毒」が原因だと考えていました。

壊血病は「海の災厄」と恐れられ、大航海時代には少なくとも数百万人規模の船員が命を落としたともいわれています。

例えば、マゼランの世界一周航海では、出発時約230人だった乗組員の多くが航海中に命を落としました。特に太平洋横断中には壊血病が深刻な被害をもたらしたことが記録されており、長期間にわたり新鮮な野菜や果物を摂取できない航海が、いかに危険だったかを物語っています。

なぜ体が「ボロボロ」になってしまうのか?

壊血病の原因は、ビタミンC(アスコルビン酸)の著しい不足です。

ビタミンCは、体内でコラーゲンを作るために欠かせない栄養素です。

コラーゲンは、皮膚や骨だけでなく、血管や歯ぐき、筋肉など全身の組織を支える「体の足場」のような重要な構造タンパク質です。

そのため、ビタミンCが著しく不足すると、

  • 新しいコラーゲンを十分に作れなくなる
  • 血管や組織がもろくなる
  • 歯ぐきや皮膚を中心に出血しやすくなる

という状態になってしまいます。

長い航海では、新鮮な野菜や果物を何か月も補給できませんでした。その結果、多くの船乗りたちが深刻なビタミンC欠乏に陥り、壊血病を発症してしまったのです。

現代でも「隠れビタミンC不足」は起こる?

現在の日本で典型的な壊血病を目にすることは非常にまれです。しかし、栄養が大きく偏った食生活では、現在でも報告されています。

12人の水兵とレモンが医学の歴史を変えた

原因も治療法も分からぬまま、何世紀にもわたり船員たちを苦しめ続けた壊血病。

しかし1747年、一人のイギリス海軍軍医ジェームズ・リンドが、後に医学史に名を残す「ある実験」を行います。

12人の壊血病患者を6つのグループに分け、それぞれ異なる治療法を試した結果、レモンやオレンジを与えられたグループだけが劇的に回復しました。

この小さな実験は、やがて世界中の海軍を変え、近代医学における比較臨床試験の原点として語り継がれることになります。

大腸内視鏡