1. はじめに:検診選びで迷う方へ
「バリウムは苦しいから嫌だ」「胃カメラは怖い」といったイメージが先行しがちですが、検診の本来の目的は「がんを早期に見つけること」です。
日本において胃がん検診は、バリウム検査から始まりました。数十年間にわたる大規模な調査の結果、バリウム検査を受けることで、受けない場合に比べて胃がんによる死亡率を約40%〜60%減少させることが科学的に証明されています。
厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」では、胃がん死亡率減少効果が科学的に証明された対策型検診として、胃部X線検査(バリウム検査)と胃内視鏡検査の両方が推奨されています。
今回は、日本消化器がん検診学会が公表した最新の全国集計データ(2021年度)(「日本消化器がん検診学会雑誌 Vol.63 (2021年度全国集計成績)」)をもとに、その実力を客観的な数値で比較します。
2. 【データ比較】がん発見率の圧倒的な差
2021年度の全国集計結果をまとめると、以下のようになります。
| 項目 | 胃X線(バリウム) | 内視鏡(胃カメラ) |
| 受診者数 | 4,371,447人 | 564,693人 |
| 胃がん発見数 | 2,945件 | 947件 |
| がん発見率 | 0.067% | 0.168% |
【解説】
胃カメラの発見率はバリウムの約2.5倍です。受診者数ではバリウムが圧倒的に多いですが、限られた受診者の中からより確実にがんを見つけ出しているのは胃カメラであると言えます。

日本消化器がん検診学会雑誌 Vol.63 (2021年度全国集計成績)
3. 胃カメラが「早期がん」に強い理由
内視鏡検診で見つかった胃がんの内訳を見ると、驚くべき事実がわかります。
- 早期がんの割合: 内視鏡で発見された947件のうち、761件(80.4%)が早期がんでした 。
- 食道がんの発見: 胃カメラでは胃だけでなく、食道がんも同時に171件(うち早期がん91件)発見されています 。
バリウム検査は「凹凸(影)」でがんを判断しますが、胃カメラは「粘膜の色やわずかな変化」を直接観察します。そのため、バリウムでは見逃されやすい平坦な早期がんを見つける力が非常に高いのです。
4. 年齢・性別による傾向(データの深掘り)
今回のデータからは、受診者の年齢層による発見率の変化も読み取れます。
- 高齢になるほど発見率が上昇:
- バリウム検査の場合、年齢とともにがん発見率は上昇します 。
- 男性の方がリスクが高い:
- バリウム受診者のうち、男性の発見率は0.09% 、女性は0.04% となっており、男性の方が発見率が高い傾向にあります。
5. 注意点
- 引用させていただいた本統計は、自治体による住民検診(対策型検診)と、企業による職域検診の結果を合算した日本最大規模の資料です。
- リスク分類について: ピロリ菌感染の有無によるリスク別の集計は行われていません。個人のリスクによって発見率は異なる場合があります。
- 受診のお願い: 胃の痛みや違和感など、すでに何らかの症状がある方は、検診を待たずに速やかに医療機関(消化器内科など)を受診してください。
