健康は食事だけで決まるのか? ― イヌイットと日本人の食生活から考える

「脂っこいものは体に悪い。」

そう考えている方は多いのではないでしょうか。
一方で、北極圏に暮らすイヌイットは、伝統的にアザラシやクジラ、魚など動物性食品を中心とした高脂肪食で生活してきました。
一見すると、「高脂肪食でも健康だった民族」と思われるかもしれません。

しかし、本当にそうなのでしょうか。

世界中の研究者が注目したイヌイット

1970年代、グリーンランドのイヌイットを調査した研究では、高脂肪食を摂っているにもかかわらず心血管疾患が少ない可能性が報告され、大きな話題となりました。 特に、魚や海洋哺乳類に多く含まれるオメガ3脂肪酸(EPAやDHA)が健康に良いのではないかと考えられ、世界中で研究が進みました。

しかし、その後の研究によって、この話はそれほど単純ではないことが分かってきました。 イヌイットにも心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患はみられ、「高脂肪食だから心臓病にならない」という単純な考え方は現在では修正されています。

私たちはイヌイットというと、犬ぞりや毛皮の服で暮らす人々を想像するかもしれません。しかし現在、多くのイヌイットは学校に通い、車を利用し、スーパーマーケットで買い物をする現代的な生活を送っています。

つまり、現在のイヌイットの健康状態を「高脂肪食」だけで語ることはできません。

実は日本人も同じです

江戸時代の日本人は、米、野菜、豆類、海藻、魚を中心とした和食で生活していました。 しかし現代では肉類や乳製品、小麦食品、加工食品などを食べる機会が大幅に増え、移動手段や仕事の内容も大きく変化しました。 つまり、日本人もイヌイットも、「食事だけ」が変わったのではなく、生活全体が大きく変化しているのです。

健康は「食事だけ」では決まらない

近年、インターネットでは、

「○○は絶対に食べてはいけない」
「○○だけ食べれば健康になる」

といった極端な情報を目にすることがあります。

しかし、健康は一つの食品だけで決まるほど単純ではありません。

食事はもちろん大切ですが、それに加えて、

  • 身体活動
  • 睡眠
  • 喫煙・飲酒
  • ストレス
  • 生活環境
  • 遺伝的背景

など、多くの要因が健康に影響しています。

イヌイットの食生活が私たちに教えてくれるのは、「高脂肪食が良い」「和食が絶対に正しい」ということではありません。

どの民族も、それぞれの土地や生活様式に適応した食事が大切だということです。

胃腸の健康が気になる方へ

「最近、胃もたれがする」
「便通が安定しない」
「健康診断で異常を指摘された」

そんなときは、自己流の極端な食事制限を始める前に、一度ご相談ください。

当院では、内視鏡専門クリニックとして、一人ひとりの生活習慣や食生活に合わせた現実的なアドバイスを心がけています。

無理なく、長く続けられる健康づくりを一緒に考えていきましょう。

参考文献

Bjerregaard P, Young TK, Hegele RA. Low incidence of cardiovascular disease among the Inuit—what is the evidence? Atherosclerosis. 2003;166:351-357.

Bang HO, Dyerberg J. Plasma lipids and lipoproteins in Greenlandic west-coast Eskimos. Acta Med Scand. 1972;192:85-94.


大腸内視鏡