胃酸で自分の胃が溶けないのはなぜ?——胃粘膜バリアのメカニズムを専門医が解説

胃は毎日、**鉄くずさえ溶かすほどの強酸(胃酸:pH1〜2)**と、**タンパク質を分解する強力な酵素(ペプシン)**を分泌し、食物を消化しています。それなのに、なぜ胃自身が消化されてしまわないのでしょうか?

その秘密は、**「胃粘膜バリア」**という高度に守られた防御機構にあります。この防御機能が何らかの理由で低下すると、**胃痛や胸焼け(逆流性食道炎の症状)**を引き起こします。

胃粘膜バリアは、主に3つの層で成り立っています。

1. 前上皮性防御:粘液と重炭酸の「盾」

胃の表面を、粘り気のある粘液が覆い、胃酸やペプシンが直接細胞に触れるのを物理的にブロックしています。さらに粘液の中には**重炭酸(アルカリ成分)**が含まれており、胃酸を中和して細胞表面を中性(pH7前後)に保っています。まるで細胞を守る「特殊なコーティング」のようなものです。

2. 上皮性防御:細胞の「壁」と「修復力」

胃の表面細胞同士がタイトジャンクション(密着結合)でぴったりと結合し、酸が細胞の隙間から侵入するのを防いでいます。また、胃の表面細胞は非常に代謝が速く、約3〜5日で新しい細胞に生まれ変わります。万が一、酸で傷ついても、すぐに新しい細胞が供給され修復されます。

3. 上皮下性防御:血流の「掃除」とサポート

胃粘膜の下には豊富な毛細血管が走っています。この血流が、組織に侵入した酸や有害物質を速やかに洗い流し(ウォッシュアウト効果)、酸素や栄養、重炭酸イオンを供給しています。さらに、プロスタグランジンという物質が粘液分泌や血流を促進し、防御全体を強化しています。

これらのバリアが崩れると…胃炎・胃潰瘍のメカニズム

ピロリ菌感染、痛み止め(NSAIDs:ロキソニンなど)の長期使用、ストレス、過度のお酒・喫煙などで防御バランスが崩れると、胃酸が粘膜を傷つけ、胃炎や胃潰瘍を引き起こします。

胃は精密なバランスで守られている臓器です。 胸焼け、胃痛、食後の不快感が続く方は、胃の防御機能が低下しているサインかもしれません。 早めに消化器内科を受診し、胃カメラ(上部消化管内視鏡)検査を受けることをおすすめします。 当院では土日も検査に対応しており、鎮静剤を用いた苦痛の少ない検査を行っております。

大腸内視鏡