**「ミュージシャンの聴覚トラブル」**に関する先月発表されたばかりの最新論文をご紹介します(Otolaryngol Head Neck Surg.2026 Feb;174(2):305-316.)
■ ミュージシャンに多い3大聴覚症状とは?
最新のメタ解析(複数の研究を統合した信頼性の高い分析)によると、ミュージシャンは非ミュージシャンと比較して、以下の症状を抱えるリスクが有意に高いことが示されました。
- 耳鳴り(Tinnitus):約42.6%(対照群 13.2%)
- 難聴(Hearing Loss):約25.7%(対照群 11.6%)
- 聴覚過敏(Hyperacusis):約37.3%(対照群 15.3%) ※聴覚過敏:特定の音が異常に大きく、苦痛に感じられる状態
研究では、クラシック音楽家とポップ・ロック音楽家の間でこれらの蔓延率に大きな差はなく、音楽のジャンルを問わず、継続的な音への露出が耳への負担となっていることが明らかになっています。

■ 音楽寿命を延ばすための「予防」と「対策」:詳細解説
論文では、生涯にわたって音楽を健やかに楽しむために、科学的根拠に基づいた以下のステップが推奨されています。
1. 「自覚症状」に頼らない定期的な聴力モニタリング
難聴は、自分でも気づかないうちにゆっくりと進行するのが特徴です。本研究でも、ミュージシャンの難聴の約63.5%は「主観的な報告(自覚症状)」によるものでしたが、裏を返せば、客観的な検査を受けなければ見逃されてしまうリスクがあることを示唆しています。
- 早期発見のポイント: 通常の健康診断で行う聴力検査だけでなく、より高い音域(12-16 kHzの高周波)の検査が有効な場合があります。特にバイオリン奏者などの高音域を扱う演奏家は、早期の変化を捉えるために、専門医による定期的なチェックが不可欠です。
- 個別化された管理: 担当する楽器や、オーケストラ内での配置(例:金管楽器や打楽器の前など)によって、受けるダメージのパターンは異なります。自分の演奏環境に合わせた、個別のアドバイスを受けることが「音楽寿命」を延ばす鍵となります。
2. 「聴覚保護具(HPD)」の戦略的活用
「耳栓をすると音が変わってしまう」という懸念から、ミュージシャンの聴覚保護具の使用率は依然として50%未満と低い現状があります。しかし、最新の知見では、単に音を遮断するのではなく、**「音のクオリティを保ちながら音圧だけを下げる」**対策が推奨されています。
- ミュージシャン専用フィルターの選択: 一般的な耳栓ではなく、全帯域を均等に減衰させる「ミュージシャン・プラグ」の使用を検討しましょう。これにより、アンサンブルのバランスや音色を損なうことなく、耳への曝露量だけを安全なレベルまで下げることが可能です。
- 「時々」ではなく「習慣」に: 若手ミュージシャンの間では、SNSやコミュニティの影響で保護具の使用率が向上しているというデータもあります。ライブや練習など、大きな音に触れる際は「楽器のメンテナンスと同じ感覚」で耳を保護する習慣をつけることが大切です。
3. 専門家(耳鼻咽喉科医)との連携
論文の結論では、ミュージシャンに関わる医療従事者が、単なる治療だけでなく**「予防的なカウンセリング」**を行うことの重要性が強調されています。
- プロ・アマ問わない相談: 「少し耳が詰まった感じがする」「練習後に耳鳴りが残る」といった、一見些細なサインを見逃さないでください。早い段階で専門医のアドバイスを受けることで、将来的な難聴のリスクを大幅に軽減できる可能性があります。
■ クリニックよりメッセージ
当院は内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)を主軸とした内科クリニックですが、「健康な体で趣味や仕事に打ち込めること」が何より大切だと考えています。
もし、「最近耳が詰まった感じがする」「特定の音が響いて辛い」といった症状がある場合は、我慢せずに耳鼻咽喉科専門医への相談をお勧めいたします。
耳の不調だけでなく、お腹の症状(血便・腹痛・便秘・胸焼けなど)が出たら、早めに内視鏡検査を!
町田駅北口徒歩0分、土日も診療・苦痛少ない内視鏡対応です。
